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Japan Textile Federation

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小池環境大臣・環境省幹部との懇談会
前田会長挨拶(要旨)

1.はじめに
環境問題については、地球温暖化や、廃棄物、自然環境の保護など、重要な問題が山積している。また、環境に対する社会的な関心も非常に高くなっており、本日の懇談会は誠に時宜を得たものと思う。

2.環境に関する主な課題
一口に繊維産業と言っても、川上の原糸・原綿から、川中の織物・編物・染色、そして川下のアパレル・百貨店・小売りに至るまで非常に幅広い業界からなっており、それぞれが直面している環境問題や取り組みも多種多様である。川上の化合繊を中心とする原糸・原綿及び川中の染色業界は、鉄鋼や化学と同様にエネルギー多消費型の素材産業であり、温室効果ガスの排出、大気汚染、水質汚濁、産業廃棄物、VOC(揮発性有機化合物)等の化学物質の大気排出削減などが、環境面での重要な課題となっている。
川中の織・編業界では、繊維屑や油剤中の環境汚染物質などが問題であり、川下のアパレル・流通業界では、裁断屑や不良在庫品、包装・荷資材等の廃棄物処理、物流に伴うCO2の排出などが環境面での主な課題となっている。
さらに、川上から川下までの繊維業界全体に共通する課題として、使用済み製品や加工段階での屑品のリサイクルがある。後程ご説明するが、繊維リサイクルについては非常に多くの取り組みが推進されているが、技術的には可能であっても、経済的な見通しが不透明で、量的な拡大がなかなか進まないのが実状である。

つぎに業界の主な取り組みについて簡単に紹介したい。

3.1.地球温暖化対策
地球温暖化対策については、川上の化合繊業界を中心に、エネルギー原単位年率1%削減を目標に、従来から熱心に省エネルギーに取り組んでおり、例えば、化学繊維業界では2003年度には1990年対比で8%低減を達成している。なお、本年2月の京都議定書の発効を見越して、原単位だけでなく温室効果ガス排出量自体の削減目標を設定し、自主削減に取り組んでいる企業もある。
また、染色業界では、経済産業省の補助金を得て電気分解と膜分離技術を活用した染色排水の完全脱色処理・再利用技術の実用化に取り組んでいるところもある。さらに、流通業界では、配送の効率化、低公害車の導入、店舗の省エネビル化、屋上緑化など様々な取り組みを実施している。 

3.2.大気汚染・水質汚濁防止
大気汚染並びに水質汚濁防止については、従来からSOX、NOXや、BOD、CODなどの環境負荷の削減に取り組み、確実に成果を上げている。 2001年に環境省から、ノニルフェノール類に魚類の内分泌攪乱作用があることが発表されたが、繊維業界では使用している油剤や仕上げ剤の中にノニルフェノール類を含むものが数多くあったため他の薬剤への切替を積極的に推進し、これまでに相当量の切替が進んでいる。
染色業界では、超臨界炭酸ガスを使用した全く新しい染色技術の開発が進められている。この方法は、水を使用しないので排水を出さず、エネルギ-負荷も小さく、余剰の染料をリサイクル使用できるため、環境に非常に優しい技術と言える。

3.4.廃棄物削減
産業廃棄物については、繊維産業界各社ともに、リデュース・リユース・リサイクルの所謂3Rに熱心に取り組んでいる。さらに、多くの工場が「廃棄物ゼロエミッション」を推進し、焼却処理等で単純に処理する廃棄物のゼロ化を達成した工場がいくつも出ている。
アパレル、流通業界では、布地の裁断屑、業務用ハンガー、包装・荷資材などが廃棄物削減の大きな課題となっているが、百貨店向け業務用ハンガーについてはアパレルと百貨店業界が協働で再利用を開始し、大きな成果を上げていると聞いている。 
なお、大量に輸入されている繊維製品の中には安価な粗悪品も多く、結局それらは国内で廃棄処分されていることも大きな問題である。

3.5.リサイクル
リサイクルについては、繊維業界は他業界に先駆けて非常に早くから取り組んでいる。例えば、ナイロン、ポリエステルの工程内ケミカルリサイクルが実用化されたのは、1951年であり長い歴史がある。また、使用済み製品のリサイクルは、ナイロン6のケミカルリサイクルが1983年から、ポリエステルのマテリアルリサイクルが1994年から本格的に開始された。
最近では合繊各社がペットボトルリサイクル繊維の本格事業展開を行っている他、ポリエステルの繊維to繊維ケミカルリサイクルを開始するなど、各社とも精力的に取り組んでいる。さらに、日本アパレル産業協会を中心に、「アパレル・リサイクル・ネットワーク構想」も検討されている。
しかしながら、繊維リサイクルに関しましては、冒頭にも申し上げましたように、廃棄物の収集・運搬、並びに選択・分離等に関わるコストによって、非リサイクル品に比べて経済性が劣ることが大きな問題となっている。

3.6.環境配慮型製品
これら以外に、環境に優しい環境配慮型製品についても繊維業界では大変熱心に取り組んでおり、主な物だけを挙げてみても、
  (1)ポリ乳酸に代表される石油系原料を使用しない繊維
  (2)有害物質のハロゲンを使わない非ハロゲン系難燃繊維製品
  (3)高機能繊維や中空糸膜技術を応用した各種のエアーフィルタや水浄化装置などの環境浄化に役立つ製品などが、地球環境の改善に貢献している。
小池大臣が「クールビズ」のネーミングで推進している省エネ衣料・快適衣料の分野では、既に多くの素材メーカーで各種涼感素材を提供しており、またアパレルメーカも、それぞれ工夫して涼感スーツ等を販売している。

4.最後に
以上、繊維産業を取り巻く環境問題と主な取り組みの概況について、ご説明した。この後、いくつかの業界団体から取り組み状況を報告するので、各事業者とも環境問題を非常に重要と考え真剣に対応していることにご理解いただき、自主的な取り組みを支援・促進する環境行政の更なる推進をお願いしたい。